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東京地方裁判所 平成7年(行ウ)57号 判決 1997年1月29日

原告

吉井一夫(X1)

吉井克爾(X2)

右両名訴訟代理人弁護士

鈴江辰男

被告

東京都千代田都税事務所長(Y) 鳥飼源宏

右指定代理人

友澤秀孝

江原勲

宮本治樹

鈴木朗

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が平成五年一〇月八日付けでした原告吉井一夫に対する別紙処分目録一及び二記載の不動産取得税賦課決定(ただし、同目録二記載の決定については平成八年五月三〇日付け減額決定により一部取り消されたもの)並びに原告吉井克爾に対する同目録三記載の不動産取得税賦課決定をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1(一)  別紙物件目録一1ないし4記載の各土地(以下、各土地を地番のみにより「旧五番一土地」などという。)はもと一筆の土地であり、旧五番一、旧五番三九及び旧五番四一土地は、原告吉井一夫(以下、「原告一夫」という。)及び訴外吉井孝夫(以下「孝夫」という。)が二分の一ずつの持分を有する共有地であり、旧五番四〇土地は、原告一夫及び孝夫が三分の一ずつの持分、原告吉井克爾(以下「原告克爾」という。)及び訴外吉井祐子(以下「祐子」という。)が六分の一ずつの持分を有する共有地であった(別表の1参照)。

(二)  その後、平成四年四月一三日付けで、旧五番一土地は別紙物件目録二1及び2記載の各土地に、旧五番三九土地は同目録二3及び4記載の各土地に、旧五番四〇土地は同目録二5及び6記載の各土地に、旧五番四一土地は同目録二7及び8記載の各土地(以下、各土地を地番のみにより「五番四四土地」などという。)にそれぞれ分筆された(別表の2参照)。

(三)  右分筆後の各土地について、平成四年六月二日付けで、同年五月二九日共有物分割を原因として、五番四四、五番一及び五番三九土地については孝夫の単独所有、五番四五、五番四七、五番四〇、五番四六及び五番四一土地についでは原告一夫の単独所有とする旨の持分移転登記がされた上、さらに、同日付けで、同年五月二九日共有物分割による贈与を原因として、五番四一土地については、原告一夫から原告克爾への所有権移転登記が、五番四四土地については、孝夫から祐子への所有権移転登記がそれぞれ経由された(別表の3、4参照)。

2  被告は、平成五年一〇月八日付けで、原告一夫に対し、五番四〇及び五番四七土地につき、各三分の二の共有持分を取得したとして、別紙処分目録一記載の不動産取得税賦課決定(以下「第一処分」という。)をし、また、同じく同日付けで、五番四五及び五番四六土地につき、各二分の一の共有持分を取得したとして、同目録二記載の不動産取得税賦課決定(以下「第二処分」という。)をし、さらに同日付けで、原告克爾に対し、五番四一土地につき所有権を取得したとして、同目録三記載の不動産取得税賦課決定(以下「第三処分」という。)をした。

3  原告らは、右各処分を不股として、平成五年一二月一日、東京都知事に対し審査請求をしたが、平成六年一二月二一日付けで棄却された。

4  その後、被告は、平成八年五月三〇日、第二処分につき、五番四五土地の二分の一共有持分の取得に係る課税部分を取り消す減額決定をし、その限度で第二処分は一部取り消された(以下、右一部取消し後の第二処分を単に「第二処分」といい、第一ないし第三処分を一括して「本件各処分」という。)。

5  しかし、本件のような共有地の持分に応じた現物分割は不動産取得税の課税対象にならないというべきであるから、本件各処分は違法である。

よって、原告一夫は第一及び第二処分の、原告克爾は第三処分の取消しを、それぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし4の事実は認め、同5は争う。

三  抗弁

1  地方税法(以下「法」という。)七三条の二第一項により不動産取得税の課税対象となる「不動産の取得」とは、所有権移転の形式により不動産を取得するすべての場合をいい、共有不動産の分割により他の共有者の有していた持分を取得することも右「不動産の取得」に当たるというべきである。

もっとも、昭和二九年一二月二八日自丁府発第一三四号自治庁府県税課長通達(以下「本件通達」という。)は、共有物件が持分に応じて単純に分割された場合は、一般の原始取得ないし承継取得とはその趣を異にするので課税しないものとし(以下「課税除外」という。)、共有者の一人が持分を超えて不動産を分割取得した場合は、当該超える部分に対して課税することが適当であるとしており、東京都においては、右と同様の取扱いをしているほか、数個の共有物を分割する場合についても、<1> 数個の共有物(不動産)が相互に隣接しており、<2> その所有者が同一であって、かつ、<3> その持分割合が同一であるという要件(以下「運用上の課税除外要件」という。)を充たしているときは、一個の共有物を分割する場合と同じ課税除外の取扱いをしている。

2(一)  原告一夫は、平成四年五月二九日付け共有物分割により、五番四〇及び五番四七土地において、孝夫から三分の一の持分を、原告克爾及び祐子から各六分の一の持分(合計三分の二の持分)を取得し、五番四五及び五番四六土地について、孝夫から二分の一の持分を取得した。

(二)  また、原告克爾は、平成四年五月二九日付け共有物分割により孝夫から二分の一の持分を取得して原告一夫の単独所有となった五番四一土地について、原告一夫から、同日付け共有物分割による贈与により、その所有権を取得した。原告一夫から五番四一土地の全部を取得したのではないとしても、原告克爾は、原告一夫及び孝夫から、それぞれの二分の一ずつの持分を取得したものである。

3(一)  右2(一)記載の原告一夫の持分取得のうち、五番四〇、五番四七及び五番四六土地の各持分の取得はいずれも不動産取得税の課税対象となるものであり(五番四五と五番一、五番三九、五番四四土地とは、隣接し所有形態が同一であって、運用上の課税除外要件に該当し、原告一夫が取得した五番四五土地の二分の一の持分は、五番一、五番三九、五番四四土地と併せると、従前の持分割合を超えないため、不動産取得税を課税しない。)、第一処分は、原告一夫が五番四〇(価格八三〇四万六六〇〇円)及び五番四七土地(価格二一〇一万六八〇〇円)の各持分を取得したことについて、右各土地の価格の合計額に取得した持分割合三分の二を乗じて得られる六九三七万五〇〇〇円(千円未満を切捨て)を課税標準額とし、これに税率一〇〇分の四を乗じて算出された税額二七七万五〇〇〇円(百円未満を切捨て)を賦課したもの、第二処分は、原告一夫が五番四六土地(価格七三二一万二三〇〇円)、の持分を取得したことについて、その価格に取得した持分割合二分の一を乗じて得られる三六六〇万六〇〇〇円(千円未満を切捨て)を課税標準額とし、これに税率一〇〇分の四を乗じた税額一四六万四二〇〇円(百円未満を切捨て)を賦課したものであって、いずれも適法である。

(二)  右2(二)記載の原告克爾の土地所有権の取得は不動産取得税の課税対象となるものであり、第三処分は、原告克爾が五番四一土地(価格一七三四万三九〇〇円)を取得したことについて、その価格一七三四万三〇〇〇円(千円未満を切捨て)を課税標準額とし、これに税率一〇〇分の四を乗じた税額六九万三七〇〇円(百円未満を切捨て)を賦課したものであって、適法である。

四  抗弁に対する原告らの認否

1  抗弁1のうち、不動産取得税の課税対象となる「不動産の取得」の解釈については争うが、その余は認める。

2  同2の(一)のうち、共有物分割の日については争うが、その余の事実は認める。同2の(二)のうち、原告克爾が原告一夫及び孝夫から五番四一土地の持分二分の一ずつを取得したことは認めるが、その余は争う。

3  同3の(一)、(二)のうち、五番四〇、五番四七、五番四六及び五番四一土地の各価格は認めるが、本件処分が適法であるとの点は争う。

五  原告らの反論

1  法七三条の二第一項は、「不動産の取得」をもって不動産取得税の課税要件としているが、法七三条の七は、相続の場合等形式的な所有権取得にすぎないものについて非課税とすることを規定している。

共有物分割は、法七三条の七に明記されてはいないが、自己の共有持分の範囲内で不動産を取得する共有物分割の場合は、形式的な所有権移転と何ら差異がなく担税力を認めることができないのであるから、非課税とするのが相当であって、本件通達は、法七三条の二第一項、七三条の七の解釈を補充するものであり、単なる行政庁の裁量による運用方法を定めた趣旨ではないというべきである。したがって、本件通達の趣旨に反する解釈運用は、法七三条の二第一項、七三条の七に違反し、違法となるものである。

ところで、本件通達は、一個の不動産の分割を前提としたものと解釈されるが、その利用関係などから社会経済的に一つとみられる共有不動産について、単純に持分に応じた共有物分割がされた場合にも、同一に扱うべき合理性があるというべきであり、数個の共有地が相互に隣接し、社会経済的あるいは実質的に一つの土地と認められるものについて全体として共有持分に応じた現物分割がされた場合には、形式的な共有者の同一や持分割合を問うことなく、実質的な財産移動の伴わない共有関係の清算として、これを非課税とするのが本件通達の趣旨に合致するものというべきである(したがって、被告の運用上の課税除外要件の<2>、<3>は相当性に欠け、殊に<3>は全く理由がないというべきであって、課税除外の要件として、<2>、<3>の要件までを要求することは、本件通達の趣旨に反するものである。)。

2(一)  原告一夫、同克爾、孝夫及び祐子は、旧五番一、五番三九、旧五番四〇及び旧五番四一土地の共有関係を解消するため、平成四年四月ころ、<1> 原告一夫は分筆後の五番四五、五番四七、五番四〇及び五番四六土地に相当する部分を、<2> 原告克爾は分筆後の五番四一土地に相当する部分を、<3> 孝夫は分筆後の五番一及び五番三九土地に相当する部分を、<4> 祐子は分筆後の五番四四土地に相当する部分を、それぞれ単独で所有することに合意し(以下「本件合意」という。)、右合意に基づき、原告一夫は、右五番四〇及び五番四七土地に相当する部分について、孝夫から三分の一の持分を、原告克爾及び祐子から六分の一ずつの持分、合計三分の二の持分を取得し、右五番四五及び五番四六土地に相当する部分について、孝夫から各二分の一の持分を取得し、原告克爾は、右五番四一土地に相当する部分について、原告一夫及び孝夫から二分の一ずつの持分を取得した(ただ、右共有物分割の登記については、担保権の処理を考慮し、請求原因1の(二)、(三)記載のとおりの手順で行われた。)。

(二)  本件において、共有物分割の対象となった旧五番一、旧五番三九、旧五番四〇及び旧五番四一土地は相互に隣接し、いずれの土地についても同一の所有者(原告一夫、孝夫)が共有持分を有し、所有者が共通であったものであり、共有物分割により原告らに帰属した前記土地部分はそれぞれの持分に応じたものであるから、本件通達の趣旨に照らし、右共有物分割による原告らの持分の取得については、不動産取得税の課税はされないというべきである。

3  したがって、本件各処分は、法七三条の二第一項、七三条の七に違反し、違法である。

仮に、原告克爾が分割対象の全土地の共有者でないため、同原告については課税除外にならないと解したとしても、原告一夫と孝夫との関係では課税除外の要件に欠けるところはないから、少なくとも原告一夫の孝夫からの持分取得については、非課税とされるべきであり、第一及び第二処分はその限度で違法となるというべきである。

4  また、仮に、被告が運用上の課税除外要件として所有者及び持分割合の同一を要求することが、直ちに法七三条の二第一項、法七三条の七に違反しないとしても、運用上の課税除外要件を充たす事案と本件における原告らの持分取得との間に、課税上の取扱いを異にする合理的な理由はないから、原告らの持分取得について課税した本件各処分は、憲法一四条に違反するというべきである。

第三  証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因1ないし4の事実は当事者間に争いがない。

二1  まず、共有不動産の分割と不動産取得税の課税との関係についてみるに、不動産取得税は、いわゆる流通税に属し、不動産の移転の事実自体に着目して課せられるものであって、不動産の取得者がその不動産を使用・収益・処分することにより得られるであろう利益に着目して課されるものではないから、法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」とは、その取得原因のいかんを問わず、不動産の所有権を取得するすべての場合をいうと解すべきであり、その取得により経済的な利益の増加を来す場合に限られないというべきである。そして、共有も所有の一形態であり、不動産の共有持分の取得も不動産所有権の取得として右「不動産の取得」に当たるというべきところ、共有物の分割は、共有者相互間において共有物の各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行われることにほかならないのであるから、共有不動産の分割により、他の共有者の有していた持分を取得することは、それが持分に応じた現物分割の場合であっても、右「不動産の取得」に当たるといわざるを得ない(最高裁第三小法廷昭和五三年四月一一日判決・民集三二巻三号五八三頁参照)。

2  原告らは、自己の共有持分の範囲内で不動産を取得する共有物分割の場合は、形式的な所有権移転と何ら差異がなく、法七三条の七により、非課税とするのが相当である旨主張する。しかし、法は、右のとおり、七三条の二第一項において、不動産所有権の取得とされるすべての場合を不動産取得税の課税対象として規定した上で、七三条の三ないし七において、「不動産の取得」のうち例外的に非課税とすべき場合を規定しているのであり、法七三条の七は、その一号から一五号まで一定の不動産の取得を列挙して非課税とすることを定めているものの、その中に共有物分割による不動産の取得は挙げられておらず、租税法の規定はみだりに拡張適用すべきものではないから(まして、右非課税規定は、法七三条の二第一項の例外規定であるから、厳格に解釈する必要がある。)、このように共有物分割による不動産の取得について非課税とすることを定めた規定がない以上、たとえこれを非課税とするのが適当であるとしても、それはあくまで立法政策の問題であって、現行の法の規定の下では、原告らが主張するような解釈をとることはできないといわなければならない(したがって、本件通達は法七三条の二第一項、七三条の七の解釈を補充するものであるとの原告らの主張は失当である。)。

3  ところで、本件通達が、共有物件が持分に応じて単純に分割された場合は不動産取得税を課税しないものとし、東京都においては、数個の共有物を分割する場合についても、運用上の課税除外要件を充たしているときは、課税除外の取扱いをしていることについては当事者間に争いがない。しかしながら、前示のとおり、法七三条の二第一項によれば、共有物分割による不動産の取得も不動産取得税の課税対象となるものであり、同条の三以下において、これを非課税とする規定は設けられていないのであるから、本件通達が共有不動産の持分に応じた現物分割の場合を非課税とする取扱いを是認し、東京都が本件通達に従った課税除外の運用をしていることは、いわば法の規定に基づかないで新たな非課税事由を設定するものであり、法に反するものといわざるを得ない(なお、当裁判所も、本件通達のような場合を非課税とすることそれ自体に異論があるわけではないが、非課税とするのであれば、法において規定すべきものであって、これを行政上の運用という方法で賄うことは、租税法律主義の見地に照らし許されないと思料するものである。)。

そうすると、原告らが、東京都の運用上の課税除外要件は本件通達の趣旨に反するとして、るる主張するところは、本件の結論に何ら影響を及ぼすものでないことになるが、念のため検討すると、本件通達が、共有不動産の持分に応じた現物分割の場合を課税除外としているのは、一個の共有不動産を持分に応じて現物分割した場合は、その分割により取得した部分は、もともと一個の不動産全体に及んでいた持分が単純に当該不動産の一部分に集約され顕在化したものとみることができる点に着目したことによるものと解され、一筆の共有地が現物分割される場合を予定したものということができるところ、数筆の共有地であっても、互いに隣接し、その共有者が同一で、持分割合も同じであるときは、それらを合筆して一個の土地とすることも可能であるから、この場合に、合筆することなくその数筆の共有地全体を一括してとらえて持分に応じた現物分割がされたときは、一筆の共有地の分割の場合と異なるところがないこととなり、東京都が数個の共有物の分割につき運用上の課税除外要件を定めて課税除外の取扱いをしているのは、右の趣旨に出たものと解することができる。そうだとすれば、数筆の共有地が相互に隣接しているとしても、その共有者が同一でなく、あるいは持分割合を異にしている場合には、それらを合筆し得る余地がないのであるから、これを一個の共有不動産と同視し得ることはできないというべきであり、東京都の運用上の課税除外要件の設定は、それなりの合理性を有しているものということができる。したがって、運用上の課税除外要件の<2>、<3>が不合理である旨の原告らの主張は、必ずしも当を得たものということができない。

三  そこで、本件各処分の適否について検討する。

1  抗弁2の(一)のうち、原告一夫が共有物分割により五番四〇及び五番四七土地の各持分三分の二を、五番四六土地の持分二分の一をそれぞれ取得したこと、同(二)のうち、原告克爾が原告一夫及び孝夫から五番四一土地の持分二分の一ずつを取得したことは、いずれも当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば、原告らが右持分を取得したのは、原告らと孝夫、祐子との間で、平成四年四月ころ、旧五番一、旧五番三九、旧五番四一及び旧五番四〇土地の共有状態を解消するため、それぞれを分筆し、原告一夫が五番四七、五番四〇及び五番四六土地(ほかに五番四五土地がある。)を、原告克爾が五番四一土地をそれぞれ単独所有することなどを内容とする本件合意が成立したことに基づくものであることが認められる。

そうすると、原告らの右持分の取得は、いずれも法七三条の二第一項の「不動産の取得」に当たり、不動産取得税の課税対象となるというべきである。

2  なお、本件合意の対象となった旧五番一、旧五番三九、旧五番四一及び旧五番四〇土地は、相互に隣接しているが、旧五番四〇土地の共有者は、原告らと孝夫、祐子の四名であり、その余の各土地の共有者は原告一夫と孝夫の二名であって、隣接する共有地の所有者が同一でないから、運用上の課税除外要件を充足しておらず、本件通達及び東京都における運用を前提としても、原告らの右持分の取得は課税除外の取扱いの対象とならないというべきである。原告一夫は、全土地について原告一夫と孝夫は共通の共有者であるから、少なくとも原告一夫と孝夫との関係では課税除外の要件に欠けるところはない旨主張するが、前示のとおり、運用上の課税除外要件は、分割対象となった数筆の共有地が合筆でき、一個の共有不動産と同視し得るとの観点から定められているものであって、共有者の一部が共通であっても合筆し得ることにはならないのであるから、原告一夫の右主張は採用することができない。

3  そうすると、抗弁3のうち、五番四七、五番四〇、五番四六及び五番四一土地の各価格については当事者間に争いがなく、本件各処分は、右各土地の価格を課税標準として適正な税額を賦課したものということができる。

四  原告は、運用上の課税除外要件を充たす事案と本件における原告らの持分取得との間に、課税上の取扱いを異にする合理的な理由はないから、原告らの持分取得について課税した本件各処分は憲法一四条に違反する旨主張する。

しかしながら、共有不動産の分割により、他の共有者の有していた持分を取得することも、法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」に該当し、不動産取得税の課税対象となるものと解すべきことは前示のとおりであり、東京都における課税除外の取扱いは、法の規定に反して、本来課税の対象となる不動産の取得について非課税の取扱いをしていることにほかならないのであって、原告らの持分取得が運用上の課税除外要件を欠くために非課税の取扱いを受けられないとしても、原告らの持分取得は、もともと法七三条の二第一項により課税されるべきものであるから、これをもって不平等であるとか不合理な差別であるということはできないのみならず、既にみたとおり、運用上の課税除外要件が共有者及び持分割合の同一を要求していることには、それなりの合理性があるということができるのであって、右要件を充足する場合とそうでない場合との間で課税除外の取扱いが異なる結果になるからといって、これを不合理な差別であるということもできないから、原告の右主張は失当である。

五  結論

以上のとおりであって、本件各処分は適法であり、原告らの本件請求は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤久夫 裁判官 岸日出夫 徳岡治)

処分目録、物件目録〔略〕

別表〔略〕

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